マラケシュ・紅の墓標

2005年6月9日(木)18:30開演 東京宝塚劇場
花組公演『マラケシュ・紅の墓標』/『エンター・ザ・レビュー』


私が最後に宝塚に足を運んだのはまだ有楽町のテンポラリー・シアターだったので、多分4,5年前です。久々に「様式美」の世界、堪能してきました。
まず本編の「マラケシュ・紅の墓標」ですが、舞台はモロッコ。モロッコといえば、マレーネ・ディートリッヒ、「カサブランカ」「アラビアのロレンス」「グッバイ・モロッコ」はたまた「オテロ」とワクワクするようなネタの宝庫です。砂漠で知り合った訳ありの男女の枯れた大人の物語?と思っていましたが、まあ、とにかく内容はてんこ盛りなのです。色々な国籍の登場人物がぞろぞろと現われてそれぞれの話がてんこ盛り。作品のテーマも人種、植民地支配、原住民の蜂起、ロシア革命と重苦しいものから、ムーランルージュの享楽、エキゾシズム、コルシカ・マフィア、持つ人が不幸になる金のバラ・・などなどてんこ盛り。音楽もアシッド・ジャズからアラビア旋律、ムード歌謡とてんこ盛り。なので私には1時間ちょっとの短時間で咀嚼しきれる作品ではありませんでした。しかし、てんこ盛りの内容に反して意外とまったりと舞台がだれる場面も多く、こちらの注意力も散漫になることもしばしば・・・。色々なテーマがあってもやっぱり舞台は華やかな「ヅカ仕様」ですし、似たような人が出てきてキャラクターの区別がつかなくなったり、正直結構きつい舞台でした。ただその内容がその場では理解できなくても、後から考えると意外と味わい深いお話だったと思います。
トップの春野寿美礼はすっごくきれいな人でしたが、線が細すぎて衣装が似合ってないのと、ダンスや立居振舞いが今一つもったいない感じがしてちょっと私の好みではなかったようです。娘役のふづき美世は優しい感じの女優さんで好感が持てましたが、彼女の演じている女性がそもそも私の大嫌いなタイプなので、どうも意地悪な見方になってしまいました。リュドヴィークの故郷がモラヴィアチェコ東部)と聞いて「まあ、ロシアの近くね!」と親近感を持つあたりにしばし首をひねったり・・・。嫌いなタイプといえば女優役の人もちょっとなぁ・・。これは役というよりその薄っぺらい演技にしばし呆気にとられてしまったのですが。
いろいろ出てくる人は皆似ていて誰が誰だかわからなくなるし、移入できる人もいないし・・・と思っていたら、一人だけいました!樹里咲穂さん。リュドヴィークの友人役でしたが、この役がまさに「ミス・サイゴン」のエンジニア。その明るく華やかな雰囲気に魅せられましたが、この方これが退団公演だったんですね・・・。それからずっとサイレント・ロールで出ていた蛇のダンサーは異色の存在、素晴らしい表現力でした。
一緒に行った人とも話しましたが、あの舞台はマラケシュでなくても良かったです。それに、いつの間にか「金のバラ」で「紅の墓標」なんていうのはどこかにいってしまったし。パリ、パリといいつつ音楽は「昼メロ」大爆発だし・・そんな訳で一部は何となく「何だかな〜」という感じで終わってしまいました。
二部のレビューは本当、目と耳のご馳走という感じでした。そういえば後半でオケの指揮者が代わりました。なんだか後半のほうがオケが乗っていたように思います。これぞ宝塚の様式美の世界、というところですが、意外とダンスとかワイルドなんですよね。特に女性の群舞なんか足をふんばって髪を振り乱して、というところもあって、本当に宝塚かと思いました。この温故知新がファンを飽きさせない所以かもしれません。レビューでもちょっと春野寿美礼さんは影が薄い感じがしましたが、女装をしていてなかなか面白かったです。まあ、一瞬三輪明宏が出てきたかと思いましたが・・・。しかし、あの出演者の熱気、フットワークの軽さには脱帽です。現実忘れられる美しい世界を見せてくれてありがとうございます。
この日、客席に元関脇の寺尾が来ていて、舞台から樹里さんが降りてきて、「寺尾さん!今日は楽しんでいってください!」と声をかけたりしていました。寺尾、大好きだったので、休憩中に見かけてもう有頂天になってしまいました。マッチョで男前ですよ〜 うーん、素敵。