ラ・ボエーム

2005年5月24日(火)サントリーホール 18:30開演
サントリーホール  プッチーニ・フェスタ 2005 ホール・オペラ:ラ・ボエーム(全4幕、日本語字幕付)

オーケストラが舞台に乗っていて、歌手が指揮者を背後に歌う舞台でした。演奏会形式ですが、ちゃんと衣装も演出もついています。「ラ・ボエーム」はクラシカルな舞台だとそのショボさに泣きたくなることもあるので、今回のようになにもないほうが返っていいのかもしれません。衣装は現代の若者服で、サッバティーニ以外は皆2,30代の歌手とあって、普通に似合っていてとても良かったです。中でもムゼッタの森麻季の超ミニはすごかった。久々にあんなミニを見たもので、歌も聴かずに彼女の足ばかりに目がいってしまいました。でも森さん、数年前と随分変わってしまってショックです。声も歌もメチャクチャ安直だし、ステージ姿は華があるけど、声が伴わないので異常に安っぽいんですよね。数年前は自分にあった曲を地道に歌っている感じがしてとても印象が良かったんだけど、このレパートリー拡大路線(なんでも屋?)に前途があるのか甚だ疑問です。一方エヴァ・メイの代役でミミを歌ったトモコ・ヴィヴィアーニさん。この人は名前も歌も初めて聞く人ですが、しっとりとした声で歌い上げた1幕のアリアなど素晴らしかったです。ただ全体的には段取りを追うのが精一杯という感じで、「まあまあ」のミミ。残念ながらエヴァ・メイの代役、サバが相手役というチャンスを生かしきれたかどうかは微妙なところ。小柄なのも手伝ってか、主役にしては控えめな印象で、この人は反対に森さんを見習ってもっと「私、私!」ってなったほうがいいと思います。今回のミミとムゼッタは、あちらを立てればこちらが立たずという感じですね。ホント、主役を張るって難しいんだぁ・・。男声陣は皆粒ぞろい、個人的にはショナールの成田さんが愛らしくて好きでした。
そしてやっぱりサバ様。このメンバーの中ではまとめ役といった余裕のロドルフォ。「冷たい手を」ではその甘甘な声で、頭の中に変な脳波がドッと流れてきて、顔中の筋肉が弛緩していくのを感じました。しかし大きい。何が大きいって顔が大きいんです。あの大きな顔を至近距離で見て、私だったら怖くて歌えなくなりそう。まあ、それは置いておいて、やっぱりサバは凄い。本当に幸せな気分になりました。
それから演出でビックリしたことが。突然Pブロックに張られた白い布の下から合唱団が顔を出して歌いだしたのです。まるで雪の日の花壇といった感じ。合唱の人たちも開き直っているのか凄い楽しそうな表情で、こちらも楽しくなってしまいました。
そうそう、この夜何が良かったってやっぱり音楽です。ボエームは「THE 直情オペラ」といっていいほど音楽が直情的。私なんかはどんなに移入できない舞台でも、最後の「ミミー!」の辺りでは絶対泣きそうになります。何の変哲も無い庶民の話をここまでドラマティックに描いてしまったプッチーニは凄いです。そして指揮のルイゾッティもものすごい難波節で歌い上げ、泣きまくり。もちろん棒も泣いていますが、彼も泣いてました。と言っても涙までは確認できる訳ないのですが、片手で顔を覆いながらのたうちまわるがごとく動く指揮者です。この人、かなり好きになってしまいました。
いやー、しかしやっぱりボエームはいいですね。楽曲の良さを再確認してしまいました。で帰宅してカレーラス+ストラータスのボエームを見てしまいました。この愛に溢れたロドルフォ、どこまでも悲劇のヒロインのミミ、最高です。