アルカディ・ヴォロドス ピアノリサイタル

初来日の天才ピアニスト、ヴォロドスのコンサートに行ってきました。

会場:サントリーホール<プログラム>


ロシア出身、32歳。会場配布のプログラムによるとコンクール歴はとくになさそう。ピアノを始めたのはなんと15歳。早くから始めればいいってものではないのね・・・。すごい巨漢で・・・って、物凄いおでぶちんなんです。成人病にならないように祈ります。まああそこまでいくと返ってかわいいわよ・・とおでぶ好きの私は思いましたが。
海外ではすでに有名なヴォロドスの初来日、しかも1日だけのリサイタルとあってか、客層は渋かったです。私の隣にも通という感じのオジサマが身を乗り出すように聴き入っていて、「いい子にしなくっちゃ」と思いました。
また、この日チャイコフスキーコンクールで優勝された上原彩子さんもいらしてました。思ったよりずーっと小柄で華奢な方。ヴォロドスの体重は間違いなく彼女の倍以上でしょうね。まあピアノは体重が重要じゃないけど、大柄な男性ピアニストは1オクターブ半くらい普通に手が開くそうでその点も有利だし、やはりフォルテの迫力は女性に真似できないものだし・・儚げな大和なでしこがよく頑張りました!!彩子偉いぞ〜〜これからも頑張ってよぉ〜〜 と僭越ながら念を送らせていただきました(笑)

演奏はとにかく完璧です。音を響かせる技巧、メカニカルな技巧、表現力もぴか一。模範的な「ピアニスト」の舞台だったと思います。ピアノの魅力をうっとりと堪能してきました。
前半のベートーヴェンは知的に統制され、美しいところは美しい音で、力強いところは力強く、とてもメリハリのついた素晴らしい演奏でした。特に31番・・好きなんだなぁ、あの曲。
後半は神秘的なスクリャービンの小品が中心。スクリャービンはあんまり聞かなくて・・・そのせいかちょっと眠かった・・・(笑)でも、なんていうのか、彼が弾くと知的なんですね。「官能」「陶酔」という感じはなく、ヴォロドスの解釈は割と明快でわかりやすいんです。「空想して」では、勝手にさまざまな情景を空想し楽しませてもらいました。
彼自身が編曲した「ハンガリー舞曲」は途中、「ツィゴイネルワイゼン」のテーマも出てきました。
それから圧巻はアンコールのヴォロドス編曲「トルコ行進曲」でした。凄すぎて思わず笑ってしまいました。ええ、もう笑うしかありませんてば!
彼は無類のピアノ好きなんでしょう。常に好奇心を持って研究している姿勢がみてとれました。第一級の技巧もさることながら、素晴らしい編曲でピアノの持つ可能性を教えてくれて嬉しい。今年を締めくくる素晴らしいコンサートでした。ああ満足。