アッティラ ワン・モア・キス

結構前にUKアマゾンか何かで買ったDVDです。両方ともジェラルド・バトラー主演です。やっと見ました...
まず「アッティラ」(2001年)ですが、5世紀にヨーロッパで暴れまくったフン族の王様の話です。あちこち襲っては奴隷やら賠償金やら手に入れていくんですね。で、ある時その奴隷の中に美女発見!いろいろあって結局奥さんにするのですが、出産により死亡。それからは人が変わったように次々と嫁さんをもらい、さらに残酷に周辺各国を攻めまくり。ローマ帝国側もアッティラに脅威を抱き「うまくやろうよ」ととりなすのに、結局は最初の奥さんそっくりの美女派遣、婚礼の初夜に毒を盛らせて殺っちゃう...という話でございます。これはアメリカのテレビドラマらしいですが、だんだんNHK大河ドラマを見ているような気分になってきてしまいました。要するに紋切り型。時代劇のテレビドラマというのはインターナショナルなのねと、新鮮な驚きでした。戦闘シーンも足軽はぼろぼろやられてくのに主要人物は絶対切られないし矢も当たらない(大将が先陣きって切り込んでいくなんてありえないんですけど...)。アッティラの部下はまさに尽忠報国の士。殿、お戯れを!と思いつつ絶対服従。時折登場する美女も英雄に花を添えるだけの存在。そんな訳でドラマ自体私の趣味に合わなくて最後まで頑張ってみたものの感動ゼロという結果になってしまいました。一応ジェラルド・バトラーが見たくて買ったDVDなんですけどあまり移入もできず残念。褌(っていうのかな)、スカート姿は一見の価値ありかな。
「ワン・モア・キス」(1999年)はジェラルド・バトラーの出演の数作をチェックした中では一番良かったです。こんな繊細な演技が出来る人だったんだなと思いました。暗い話ですぐにもう一度見ようという気になれませんが、珠玉の小品といった感じです。サントラ曲も好みでした。(フェドーラのアリア、スラヴァの「アヴェ・マリア」だもんね、私の世界だよ。)ニューヨークで暮らしていたセーラは末期癌を宣告され故郷の小さな町(スコットランド?)に戻ってきます。7年前と何一つ変わらない小さな町。無口な父親も家を出た日と変わらぬ様子で居間の椅子に腰掛けていました。一つだけ変わっていたのはかつての恋人サム(ジェラルド・バトラー)に奥さんがいた事。セーラは彼の妻に言います。「私はもうすぐ死ぬの。だからそれまでの間をあなたの夫と過ごしたい。」ありがちなストーリーですが、この話はなんかリアルで引込まれてしまいました。
この映画全体に漂う何ともいえない閉塞感、これはサム自身ずっと感じていて、いつか抜け出したいと思っていたことではないでしょうか。彼は「優しい妻ととりあえず幸せに暮らしているけど、この小さな町であのセーラのお父さんのように一生を終えてしまうなんて、僕の人生はそれでいいんだろうか?」と感じていたのかもしれません。そこに現われたかつての恋人は、地味で内気な彼にとって最高に刺激的な女性だったのでしょう。よく良い人なのにとことん運が悪いという人がいます。このサムもそうですが、多分、その人の選択の問題なのですね。結局彼は奥さんに去られ、セーラも死んでしまいます。「あの人奥さんに逃げられちゃったらしいよ..馬鹿だよねぇ」と言われておしまい。いやいや、ほんとに何だかねぇ・・・という映画でした。
結局この映画、ジェラルド・バトラー主演と言っても、セーラを演じたヴァレリーエドモンド(松下由希系?ごっつい女優さんです)のインパクトが強いです。ストーリー自体彼女の視線で動いていきますし。彼女の我儘ぶりは、人は死を目前にどんどん心が洗われていく、という私の幻想を見事に打ち砕いてくれましたね。まあ、そういう人に人生賭けてしまうのがまたサムの哀れなところなんですが。この映画は当然ながら字幕がないので、ちゃんと理解できてる訳ではないんですが、すぐにまた見たいという気分になれないのです。またそのうちにね。